大河ドラマ「花燃ゆ」。伊勢谷友介さん演じる吉田松陰がめっちゃかっこいい。7年程前、出雲に住んでいたころ、萩まで一人旅をしたのを思い出した。当時は、こんな私にも少なからず若い部下がいた。変化の激しい時代、優秀な弟子を多数育てた松陰先生の思想を知りたいと思い立ち、萩を目指した。出雲から萩までは国道9号線を西に200kmあまり、 車で3時間半の道のりである。山陰の海はどこまでも碧く、あまり知られてはいないが、日本で一番美しい。ずっとこの海岸線を眺めながらのドライブである。萩の街に近づくと明らかに風の香りが変わる。思わず車を乗り捨て、自転車に乗り換えた。黒潮の香りである。海の色もどこか温かい。
萩の街に入ったとたん、海の色、香り、雰囲気ががらっと変わり、どこかエキゾチックなものを感じた。
うに丼。うまい。
萩の市内を縦横にはしる路地は、整然とした土塀が現存し歴史を感じさせる。私はほとんどの路地を、自転車で走り抜けた。街のいたる所に、歴史的な名所や記念碑がある。そして、街の人たちは、今でも彼を「松陰先生」と呼び、尊敬の念を持ち続けている。「歴史に学ぶ」とはこういうことなんだろうと思う。
この小高い山は、街のシンボル萩城跡である。三方を海に囲まれた海城だ。
立派な石垣が残っている。
お城の裏側に回ると、海に突き出した石垣があった。山城しか知らない私には異国情緒さえ感じさせた。きっとこの風景、風土が多くの英雄を育んだのだろう。
そして いよいよ松陰先生に会いに松陰神社へ。
境内には、松下村塾の現物が移築されている。
建物の中には、塾生たちの写真や肖像画が並ぶ。幕末の志士 久坂玄瑞、高杉晋作、明治の新時代を築いた伊藤博文、山縣有朋、塾生ではないものの松陰の教えを受けた桂小五郎などなど本当にすごい革命家たちの顔が並ぶ。日本を、列強の植民地支配から救うために命をかけた人たちだ。このあとも、山口県からは多くの総理大臣を輩出している。
松陰の人材育成姿勢を示すものがあった。彼は、上から目線で弟子を教えるという姿勢ではなく、塾生と共に行動し、ともに議論し、ともに考えるというものであった。師匠と弟子が共に教え合う「弟同行・師師弟共学」というスタイルである。彼は弟子入り希望の者に「あなたは私に何を教えることができますか?」と問うたという。 弟子個人個人の長所を認めそれを伸ばした。現代の組織学習に近い考え方だと思う。ふと 若いころ、先輩社員から教わったフランスの詩人ルイ アラゴンの言葉を思い出した。「教えるとは、ともに希望を語ること。学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。」今も私の座右の銘である。リーダーの最大の仕事は人材育成であり、その志は未来を変えることを彼は今も私たちに教えてくれている。
「諸君 狂いたまえ!古い考えや価値観にとらわれてはいけない。行動の時だ!」と松陰は叫ぶ。過去の価値観の中で生きることは容易い。楽だ。しかし 彼は、あえてそれを否定し革命に走る。とんでもなく危なっかしい人物だったのだろう。逆に現代日本は、保守的に、地道に、ひたむきに生きることを良しとする風潮が強すぎると思う。ある人に言わせれば、世界は既に「テロと戦争の時代」に突入したという。米国が「世界の警察官」の役割を放棄した。ロシアがクリミアやウクライナで武力による国境の変更を成し遂げ、核の使用準備までしていた。中国がアジア各地で領土問題を引き起こし、経済的には米国と対峙しようとしている。日本があれだけ費用負担をしてきた国連は、これら安保常任理事国の分裂と拒否権の応酬で機能不全となりかけている。イスラム社会はこの狭間で混迷を深めテロの拡散が止まらない。この先、日本のポジションをどう取るのか、現代の吉田松陰が必要な時代なのかもしれない。諸君、狂いたまえ!